光学顕微鏡と電子顕微鏡
顕微鏡で観測可能なものと光の波長の関係性。電子顕微鏡と光学顕微鏡の違いなど。
光学顕微鏡
弊社で研究用に使用しているのは超高倍率(最大約2000倍、実用1500倍)の光学顕微鏡に高解像度カメラをつけて静的にも動的にも観察と記録ができるようなものです。
光学顕微鏡の倍率は理論上はもっと高倍率にできますが、上でも実用1500倍と書いたように物質表面の詳細な観測観察に関しては1000~1500倍程度が最も使いやすく、それ以上はあまり意味がなくなります。よって弊社で使用している対マテリアルの光学顕微鏡では最高レベルのものになります。
と言いますのも光学顕微鏡という製品の特性上可視光線で観測可能なもの以外は実体として映し出せないからです。理論上の制約では100nm以下の物質の観測ができないということですが実際には、人間の目で可視光線として認識されるのは360nm。約400nmとしてもミクロン(マイクロメートル)換算で0.4μmなのでそれ以下の凹凸や粒子、構造などの観察は難しいです。
よってナノサイズの製品、0.1ミクロン以下の粒子物を謳っている製品に関しては電子顕微鏡による観察やナノ対応の粒度分布測定器が必要になります。
電子顕微鏡
自社保有していないためあまり詳しくありませんが、大きく分けて透過型と走査型の電子顕微鏡があります。弊社で実験委託するとしたら電子線を放射し、反射してきた電子の情報をもとに実像化させるという走査型の顕微鏡になると思います。
電子顕微鏡の優れているところは「分解能」であり、決して倍率ではありません。これは表面改質状況などを研究するときに知ったのですが、倍率がいくら高くても光の波長に依存する光学顕微鏡では「架橋の構造」などは観察できません。
表面の倍率をアップした上で、映し出されている部位をどれだけ分解できるか、それが分解能です。
たとえば塗装の表面を何千倍に拡大しても光の波長以下の凹凸などは見えず「その部位の画像」がひたすら拡大するだけですが、電子顕微鏡の100倍データでは、塗装表面を100倍で映し出し、その部位のナノレベルの凹凸表面構造を映すことができます。
物にもよるのでしょうが1nmのレベルなら鮮明に実像が出せるそうです。
電子顕微鏡は何故使わないのか?
重要な場面では外部委託します。自社保有したいという思いはありますが弊社のように実用レベルでの実験を3桁単位でトライ&ゴーするやり方には向かないという点。これは試料作成や準備に相当な時間やコストがかかるためです。
何より一台数千万ですから製品コストに直撃してしまうという点もありますし、実際に「実用テスト」で効果検証を数値化、目視確認できれば電子顕微鏡レベルでの解析が必要になることは少なく、高性能な光学顕微鏡で対応できるからです。
弊社の顕微鏡は対マテリアル用の光学顕微鏡で、強力な同軸光の照射に加えて外部ユニットで多種波長光+調光+可変角のカスタマイズ照明がありますので、かなり観察能力は高いです。
粒子分散などの観察画像
ファインパウダーの研究はかなり行っていますので、粒子径の分散傾向などを確認するときに使用しています。微粒子のケイ素やフッ素を混ぜると塗装に定着すると思っている人も多いのですが、開発では幻想は通用しません。現実との戦い~トライ&ゴーです。証明できない持論を振りかざしても前に進めません。
画像は実は失敗例です。
架橋被膜の表面構造
現状で一番小さな構造物を捕らえたのは、エクスシールドで形成する硬化皮膜の表面構造です。超撥水防汚被膜特有の構造でぼやけていますが、鮮明に写っても公開許可が下りるがどうかギリギリのラインです。
調光機(波長・角度・色温度・光量)のカスタマイズによって観測可能になっていますので、普通の光学顕微鏡では観測不可能な領域になっていると思います。
以上光学顕微鏡と電子顕微鏡の違い、弊社使用の顕微鏡の特徴と観察画像公開でした。