ガラス硬化系コーティングとガラス系コーティングの比較
近年認知度が非常に高まってきたガラス系、硬化系ガラスコーティングに関して比較と違いなどの解説
ガラスコーティングとは
ここで解説するガラスコーティングとはいわゆる「ガラコ」=ウィンドウコーティングではなく、ボディーにガラス質のコーティング被膜を形成するタイプのボディーコーティングを指します。
近年認知度が高まってきた背景として新車販売ディーラーが従来オプションのコーティングとして取り扱ってきたフッ素系のテフロンと呼ばれていたコーティング剤の上位版として取扱いを開始したということが挙げられます。
本当に高性能なのか?
正直手放しで上位互換になるような性質であるとは認められません。もちろん従来品と比較して高性能な部分が多いことも事実ですが、使用環境によってはデメリットも存在します。
販売ディーラーが取扱いを始めた主な理由は製品が優れているからという理由よりも取り扱う商品の単価が高い付加価値商品だからという理由が9割以上であると思われます。
その証拠に取り扱っている自社のガラスコーティングが一体どのような製品なのか答えられるディーラースタッフは趣味で調べているマニアを除けば皆無に等しいでしょう。これは単純に商品知識として持っているのは、いわゆる「広告に載っている知識」をそのまま教育に使われているからです。
実際に商品メーカーに言われるがまま「ガラスの被膜がボディーに乗っかっている」と思い込んでいるスタッフの多いことに正直驚愕しました。
ガラス系?硬化系?コーティングの種類と判別
最初はディテーリング専門店が、次にコアな層向けへのインターネット販売、徐々に新車ディーラーでの取扱いが増えて現在ではカー用品店やホームセンターのカー用品売り場でも主流になりつつあります。
多くのガラス系、硬化系と呼ばれるコーティング剤が販売される中、市場は混沌とした状態になっております。広告や謳い文句が派手なので、何が真実なのかがユーザーサイドに非常に分かりにくくなってしまっている現状は何とかしたいところです。
CPMも硬化系コーティングの取扱いがあるため具体的な商品名で分類できない点は残念ですが、概ねの判断基準をまとめましたので、以下を参考にガラス系コーティング、硬化系ガラスコーティングを判別していただければと思います。
硬化系(硬化被膜型)ガラスコーティング
主に施工店の取扱いが主流でCPMのコーティングもこのタイプです。
液数、液性に関して
1液性と2液性が主流ですが3液性の製品もある。複液性にする理由は混合時に化学反応を活性化させるためで、性能をコントロールしやすく高性能な傾向にありますが、取扱いや保管性が悪いという欠点もあります。
2液性以上の製品は混合タイプ以外にも2液目をオーバーコートして仕上げるタイプも最近では多い。
1液性は常温で空気中水分と反応して硬化するタイプです。開封すると徐々に反応が進んでしまいますが2液性のように混合する手間などがはありません。コーティング剤の高性能化がシビアで、ユーザーに優しく制作側には優しくないコーティング剤です。
被膜特性
主に硬化被膜型と表面改質型があります。この分類に関しては非常に理解が得られていない部分です。
溶剤を多く含むタイプ=液剤を蒸発させると残留物が非常に少ないタイプは表面改質タイプに分類していいと思います。アルコールもしくは石油臭が非常に強いのが特徴です。
溶剤を多く含むタイプはコーティング剤として作りやすいため硬化系コーティングは実は「被膜型」ではなく表面改質型が多いのが現状です。オーバーコート専用コーティングとしてCPMが販売しているクロスリンクスはこのタイプです。
硬化被膜型は常温下に放置した際に蒸発する成分が少なく、またはほとんど無くコーティング液剤の大半が硬化物として残留するタイプです。膜厚が確保でき、艶や傷の隠蔽に優れた性質を示します。溶剤を含まない、または極少なため施工性に難がある場合が多いです。
エクスシールド、Reシールド、ホイールコート、グロスコアはこのタイプです。
被膜性質
撥水(疎水)性、親水性どちらもあります。撥水性の場合無機ガラス性質の結合に撥水性が出るように有機官能基を持たせます。つまりは全てが無機ではなく撥水性質を持たせるために被膜表層に劣化指数の低い、例えばフッ素のような有機官能基を取り入れた被膜を形成します。
親水性の場合もSi02を結合させた1枚のガラス板のような被膜は出来ませんのでSi-O2結合をベースに酸化チタン表層に結合させたりすることによって親水性を得るガラスコーティングもあります。
材料表示
ポリシラザン、シラン、オルガノシラン、オルガノポリシロキサン、シリコーン、シロキサンなどありますが、かなり適当な表記ですし、ニュアンスが違うだけでほとんど同じ物を示していたりしますので、あまり参考にはなりません。
ただしガラス質に最も近く、本当の意味で「ガラス」を冠することが出来るのは化学的にはポリシラザンを材料としたガラスコーティングだけです。
しかしながらCPMの実験ではポリシラザンコーティングが常温硬化環境下で透明なガラスの硬化物を生成した例が一件も確認できませんでした。したがってポリシラザン原料の場合は表面改質型として働く性質であると認識しています。
ガラス(繊維系)コーティング
液数、液性に関して
1液性で水溶性であるものがほとんどです。石油系溶剤などを含むタイプでも界面活性剤やグリコール系溶剤によって水溶化されています。透明な容器でしばらく時間を置くと2層以上に分離することもあり、撹拌してから使用するタイプも少なくありません。
硬化系のコーティングと比較して保管が楽で、自己架橋によって硬化して使えなくなってしまうようなことはありません。期限を設けているコーティングも基本的に問題が起きにくいです。
被膜特性
硬化やガラス被膜を謳ってはいますが放置乾燥させても硬化物質が生成されることはないので施工時にどのような反応が起きて被膜化するかはCPMの研究では分かっていません。よってCPMでは硬化系ではなくガラス系を冠するコーティングは存在しません。
基本的には成分のケイ素化合物やフッ素化合物と塗装面の電荷や表面張力、材料の特性でイオン結合するタイプが多いと考えられます。分かりやすい例ですと、ガラスに付いた油膜が通常の洗車では強固で全く落ちない・・・こういった性質をボディーコーティングとして利用していると考えて下さい。
一部、水性シランと呼ばれる表面改質型の硬化系コーティングに分類されるようなコーティング剤も例外的に存在します。
被膜性質
弱撥水が主流で、排水(水はけ)性の高いタイプの人気が高い傾向にあります。成分によって親水に近いタイプ、撥水が強いタイプもありますが少数です。
材料表示
化学物質として存在しない名称が多く挙げられているのが特徴的です。存在しない物質はここではあえて書きませんが、シリコーン、ケイ素化合物、水性シラン、フッ素化合物などがまともな表記かと思います。
シリコーンオイルはケイ素化合物なので、シリコーンオイルが入っているだけでガラス系を謳っている製品も存在します。ただ、シリコーンオイルを始めとするケイ素系化合物が化学的に非常に安定しており劣化しにくいのは事実です。
ガラス系と硬化系コーティングの性質比較表
種類/性質 | 液数・液性 | 形成被膜特性 | 被膜性質 | 材料 |
---|---|---|---|---|
硬化系・硬化型 ガラスコーティング
|
1液無溶剤 1液溶剤 2液混合溶剤 2液オーバーコート 3液溶剤 2+1オーバーコート ※全て油性 |
硬化被膜型 表面改質型 |
撥水 超撥水 弱撥水 親水 |
シロキサン シリコーン ポリシラザン シラン フッ素化合物 |
ガラス系(繊維系) コーティング |
1液 多層分離1液 ※基本的に水溶性 |
表面改質型 表面張力展着 |
撥水 親水 弱撥水 |
シリコーン シラン 二酸化ケイ素 ケイ素化合物 フッ素化合物 |
コーティング性能としての比較
種類/性質 | 艶・輝き | 施工性 | 施工リスク | 耐久性 |
---|---|---|---|---|
硬化系・硬化型 ガラスコーティング
|
表面改質型 良好 ○ |
表面改質型 △~○ |
高い~中程度 ☓~△ |
非常に高い ◎ |
硬化被膜型 非常に良好 ◎ |
硬化被膜型 ☓~○ |
|||
ガラス系(繊維系) コーティング |
良好~非常に良好 ○~◎ |
中程度~非常に良好 △~◎ |
非常に低い ◎ |
中程度~高い △~○ |
以上一般的な製品傾向として情報を挙げさせて頂きました、追記、修正を加える可能性はありますが暫定の情報としてまとめになります。