被膜の表面特性・撥水と疎水
撥水系のコーティング剤やワックスの表面特性について、防汚性などに関しての特性
撥水性と疎水性
撥水と疎水の違い
まず撥水はともかくとして、疎水という言葉は一般ユーザーの間ではあまり馴染みがないかもしれません。一方コアユーザーさんの間ではコーティング剤の表面性質で「疎水」という言葉は意外と浸透してきているかもしれません。
他には表面処理技術を要する業界に従事している方は聞きなれているかもしれません。
実のところ撥水と疎水とはともに「水と馴染まず反発する」という性質を示す言葉であり、撥水=疎水。つまり同義と考えて間違いないです。しかしながら、自動車コーティングの業界では区別されている?ようで疎水は水と馴染まない低撥水状態を示し、低撥水以上の状態のときに使われる場合が多いです。
つまり疎水性の度合いを示す言葉として撥水という言葉が用いられているという状態です。弱撥水、低撥水、強撥水、超撥水などが一般的に用いられる撥水の強度表現で、正直なところ製造元の観点に依存した表現ではあると思います。(弊社を含めて)
※上記画像はCPMのエクスシールドの超撥水能力。
疎水と親水の境界は?
ちなみに親水性と疎水性の境界は?なんて素朴な疑問が沸くかもしれませんが、化学的観点からですと官能基の性質や水に対する溶解度などから判定する方法がありますが難しいことを考えるのは止めです。コーティング剤に関して言えば単純にボディーへの水滴接触角度の目視で判断してしまうほうが分かりやすいと思います。
要はこれもまた製造元依存の判断です。簡単に言いますとボディーに出来る水滴を見ての水滴の潰れ具合で製造元判断で表記しているという感じがほとんどです。実際に計測機を使って表記しているところは大手メーカーくらいかと思います。
実際今までに市販業販問わずに100以上のコーティング剤を研究、試用してきましたが、弊社ならば低撥水~撥水程度の表現しか出来ない製品に超強力な撥水効果!と書かれていたケースもありますからメーカー主観と言えば聞こえは悪くないですが意外といい加減な部分もあります。
撥水・疎水の度合いと表現
ボディーとの水滴の接触角度を対水接触角度といい、親水・疎水の度合いを表現する場合などに用いられる表現で、その角度が大きいほど疎水性が高く150°以上の角度を有する状態を超撥水と呼びます。
ちなみに自動車コーティングにおいては耐久性や施工性との観点から150°クラスの超撥水は不可能でしょう。一時的に実現できたとしても汚れの付着・耐久性の観点から極短期しか維持できず無意味になってしまうのが現状です。(弊社でも光沢や耐久性を無視すれば実現だけは可能です)
そのため110°以上の対水接触角度を1か月以上保持出来ればそのコーティング剤は超撥水コーティングと呼んで差支えないかと思います。自動車コーティングにおける最高クラスの接触角度は115°前後です。
撥水・疎水性コーティングの傾向と特性
実はコーティング被膜の水に対する特性である程度の防汚性能などが決定してしまいます。親水・疎水が示すように疎水=撥水性は水を退ける性質、水溶性のものと親和しない性質を持っている一方、油と馴染みやすく油性の汚れの付着が目立つことが多いです。
淡色車で目立ちやすい雨の水が垂れた痕、いわゆる雨垂れによる水垢などと呼ばれる黒い筋の汚れですが、アノ汚れの正体は実は車が原因である場合が非常に多いのです。
黒い筋が目立つ部分はどこでしょう?決まってドアハンドル、ドアミラー、ドアの下のステップ付近が酷かったりしませんか?
これは自動車に使用されているグリスや防錆剤が水滴によって微量ずつ持ち出された結果、水滴の通り道に沿って油分が付着します。更にその部分に汚れを吸着し、黒い筋が出来上がるというストーリーがあります。水垢ではなく油垢なのです。
もちろん自動車メーカーも完全に把握しているでしょうし、これは自動車の構造上避けられないということなのでしょう。
親水系のコーティング剤がいかに水滴の接触角度を0に近い接触角度を目指した超親水状態にしても、流れる水と油分という条件は決して免れることができません。しかしながら通り道が分散する傾向があるため、油分を水膜表面に浮かしたまま流してしまうことができます。
もちろん現実環境は甘くないので親水被膜でも油分汚れは付着しますが、撥水性の被膜が水滴を転がすように流せば水滴が拾った油分はほぼ9割型に近い割合でボディーに付着するであろうことを考慮すると、この部分に関しては撥水系コーティングは基本的には不利です。
CPMのエクスシールドも撥水である限り、黒い筋が付いてしまうのは避けられませんが、防汚構造被膜の付着率低減効果は大きいです。ボディーに染み付く可能性は皆無に近く水洗いでの容易な除去が可能です。