鉄粉除去と対策
頭を悩ませる鉄粉除去の方法と対策について詳細解説をさせていただきます。
鉄粉の除去方法
除去方法としては大別して2パターンありますが、複合して3パターンありますので検討してみてください。
鉄粉粘土による除去
付着量が多い場合、付着している鉄粉の粒子が大きい場合などの一次除去には粘土による除去が効率的です。粘土クリーナーは、想像しているとおり油粘土のような想像そのままの「粘土」です。
メリットとしては効率的に大量に除去できる点、面積あたりのコストですが、デメリットとして慎重に使用しないと除去した鉄粉で大量に深い傷が入ってしまう可能性がある。使用方法が以外とシビア。塗装染色に対して効果がない。などが挙げられます。
粘土を使用した鉄粉除去の作業方法
まずホースなどを使って水を流せる環境がないと厳しいです。方法としてはバケツにお湯(40~50℃)を用意して粘土をある程度やわらかくします。夏場などで粘土が自由にこねれればお湯は必須ではありません。※注意:柔らかくし過ぎるとボディーにくっつくことがあります。
次に手のひらで丸めた粘土を掌に収まるくらいのサイズまで潰して煎餅のようにします。
ボディーに流水させている状態で粘土を滑らすような感じで往復させます。何往復か(鉄粉が多い場合は1往復)させたら滑らせた面を確認して、汚れがあれば粘土をこねて新しい面がボディーに当たるようにします。
これを何回も繰り返して鉄粉除去を行います。面を変えずに粘土を使用させたり、十分な水分がない状態で滑らすと傷がつく原因になりますので慎重に作業しましょう。
地面に落としてしまったり、砂などが多い所に置いてしまったり、洗車していないまま使用したりすると粘土が使えなくなってしまうので、取扱いと保管には気を使いましょう。粘土によって傷を増やすパターンは非常に多く、プロでも相当慎重に使用します。
鉄粉除去剤(ケミカル)による除去
付着している範囲が広く、症状が軽い場合は鉄粉除去剤の使用を推奨いたします。鉄粉除去剤はチオグリコール酸アンモニウムという還元剤を使用して鉄粉の付着原因となっている錆の部分を還元反応で溶かすことによって鉄粉をボディーから分離させます。
メリットとしては吹きかけるだけで除去ができる手軽さ、染色されている部分にも効果がある、粘土のように物理的な傷を作る心配が皆無という点などが挙げられます。
デメリットとしては黄色などの一部の顔料に反応し変色させてしまう、臭いがきつい、価格が高額、鉄粉粒子や酸化が激しい場合は一回では除去しきれないなどが挙げられます。
除去剤(ケミカル)を使用した鉄粉除去の作業方法
粘土と異なり洗車の完了に関わらず使用することはできますが、除去剤を流してから洗車を行うこと。
使用方法としては簡単で多くの鉄粉除去剤はスプレータイプになっていますので、鉄粉被害が目立つ部分にうっすら濡れる程度に吹きかけて放置するだけです。このとき薬品が完全に乾燥するまで放置しないこと。時間にして10分以上放置しないこと。を守りましょう。
メーカーによって有効成分の濃度が異なり、薬品の特性上酸化顔料に反応する可能性があるため市販の鉄粉除去剤は効果が弱いものが多いです。
完全に除去出来ない場合は吹きかけて放置→水で流して確認という作業を繰り返す必要があります。自宅で洗車できるユーザーであっても、臭いは問題です。弊社でもこの臭いは何とかできないものかと研究中です。
薬品特性についてもう一度書いておきますが、大抵は中性であり反応物以外にはほとんど無害です。しかしながら酸化金属に対して反応しますので、塗装のTOPコートにクリア層を有していないソリッドカラーに関しては何らかの影響が出る可能性があります。
現状として確認できているのは黄色ですが、全ての黄色に使えないわけではなく、クリア層を有していれば使えますし特定顔料にのみ反応するようですので「目立たない場所で試してみる」のが安全に使える方法となります。
複合的な使用方法
粘土が物理的に除去するのに対して、除去剤の場合は化学反応による除去です。そして粘土で除去できるのは異物そのものですが、除去剤のほうは酸化した部分を溶解させるような働きをして異物を浮かすような効果があります。
すなわち結果的には「鉄粉除去」という効果が得られますが、どちらも一長一短です。鉄粉被害が激しく出来る限り完全に対応したいという場合は鉄粉除去剤を使用した後に粘土を使用する手法が一番除去率が高いといえます。
除去剤だけで取れてしまうものもありますし、取れなかった鉄粉に関しても固定が緩くなり取れやすい状態で粘土の作業を行うことができるようになるということです。
デメリットとしてはコストと作業時間になるかと思います。
新型ケミカルでの超強力鉄粉除去
CPMのプロジェクトの中で現在かなり強力な鉄粉除去クリーナーを開発試用中です。現在製品は完成の域ですが塗装面や他の対マテリアルへの浸食テストを行っており、データをオープンにしてから販売する流れです。
浸食テストをしていることから察していただけるかと思いますが、非常に強力なケミカルなので「どのような環境(温度湿度)」で「どのくらいの時間」が経過したら「どのくらいの影響」が出るかとういうデータをひたすら研究してデータ化しています。
このクリーナを使用すると上記説明の「複合的な使用方法」要は粘土+従来のケミカル除去に匹敵、もしくはそれ以上の除去率になります。時間効率にすると3~10倍です。常用するようなケミカルではありませんが鉄粉被害に苦しんでいるユーザー様にとっては画期的な性能を有しています。
使用方法等は上記「鉄粉除去剤(ケミカル)」による除去方法と大差なく、放置時間が~3分程度に短縮されるくらいの違いで、使用方法は非常に簡単です。液材の攻撃性が強いのは除去性能に比例しているような形ではありますが、使用方法を守れば失敗する確率は非常に低く、難しくないので失敗する要素は少ないです。
詳細は追記します。コードネーム(DB)
鉄粉の付着防止・鉄粉対策
知る限りでは全てのコーティングシステムの保証対象外になっていることから、防ぎようのないダメージとして扱われていますが付着低減やダメージの軽減はコーティングによって可能です。
無機系のガラスコーティングによる鉄粉防御
鉄粉に関してだけ言わせていただくと無機の高硬度コーティング、すなわち硬化系のガラスコーティングと言われている部類の被膜を形成するタイプは鉄粉の耐性が高く、定着が弱くなる傾向が見られます。
ガラスにも鉄粉は付着しますが、明らかに定着数は少なく、錆の色の侵食などもほとんどありません。これは鉄粉の付着性が有機物よりも無機物に対して低い為と考えられます。よって無機に近い、そして難付着性の被膜を形成することによって鉄粉の付着率を低下させることは可能です。
CPMの硬化型コーティング、エクスシールドは完全な無機ではありませんが無機ベースで有機材料も化学的に非常に酸化されにくい性質であり、被膜を有機物とのハイブリッド構造にした理由としては「難付着・防汚性能」の向上に他なりません。
ただ単に無機ではなく無機に近い難付性防汚被膜。これは鉄粉に対して現状考えうる対策の中で極めて有効であるといえます。
洗車頻度のアップ
他の汚れに関しても同じことが言えますが、鉄粉も付着して時間の経過と共に取れなくなっていく傾向にあります。よって洗車の頻度が低いと、鉄粉の蓄積の度合いとして洗車頻度の高い車に比べると被害が酷くなりがちです。
洗車の度に鉄粉を除去しなければいけないということではなく、頻度を落とすことによって普通どおりの洗車でも取れてしまうような鉄粉が定着して除去困難になってしまう事を避ける意味での洗車頻度アップです。
これは鉄粉に限らず他の汚れに関しても同様のことが言えます。